割増賃金を定額支給するときは、実際の割増賃金との不足分を払うこと
割増賃金定額支給については、次の点に注意してください。
● 通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区分できること
● 通常の賃金部分から計算した実際の時間外・深夜割増賃金に対し、不足が出る場合は、その不足分を支払うこと
参考にいくつかの裁判例をご確認下さい。
<割増賃金定額支給に関する判例>
● 徳島南海タクシー未払賃金請求(控)事件
(平成11年7月19日判決 高松高裁平成7年(ネ)367号、なお、会社の上告は、最高裁に受理されなかった。 )労使間で、時間外・深夜割増賃金を、定額にして支給することに合意したものであれば、その合意は、定額である点で労働基準法37条の趣旨にそぐわないことは否定できないものの、直ちに無効と解すべきものではなく、通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区分でき、通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増賃金との過不足額が計算できるのであれば、その不足分を使用者は支払えば足りると解する余地がある。
● 千里山生活協同組合賃金等請求事件
(平成11年5月31日 大阪地裁平成9年(ワ)693号)被告〔会社〕は役職手当(職務手当、業務手当)が時間外手当を含むものであると主張するところ、役職手当等は時間外賃金以外のものを含むものであるが、時間外賃金を固定額で支払うこと自体は、その額が労基法所定の割増賃金額を超えるかぎり、これを違法とすることはできないものの、その場合でも、時間外割増賃金としての労基法所定の額が支払われているか否かを判断できるように割増賃金部分が明確でなければならない。しかるに、本件では、右役職手当等のうち、いかなる部分が時間外割増賃金に該当するかを明らかにする証拠はないから、被告の右主張は採用できない。
● 関西事務センター賃金等請求事件
(平成11年6月25日判決 大阪地裁平成10年(ワ)1989号)被告〔会社〕は、原告〔課長就任者〕に時間外勤務手当を支給しなくなったのは部門長以上の役職者には時間外勤務手当を支給しないとの就業規則によるものであると主張している。(略)被告が就業規則や賃金規程で定めている時間外勤務手当が、労働基準法が法定労働時間超過の労働に対して支給することを強制している割増賃金の趣旨であることは明らかであり、さらに、これを所定労働時間超過の労働に対してまで支給することとしたものであり、その点で、労働基準法による保護以上に拡張したものである。割増賃金の支給を命じる労働基準法の規定は強行法規であるから、単なる合意によってこれを不支給とすることは許されないし、部門長以上の役職者であることを理由に、割増賃金を含む時間外勤務手当を支給しないとするのであれば、そのような取扱いが有効とされるためには、右役職者が、同法41条2号に言う監督若しくは管理の地位にあるものに該当するか、あるいは右役職者に実質的にみて割増賃金が支給されていると解される場合でなければならない。(略)課長に就任したことによって原告が従業員の労務管理等について何らかの権限を与えられたとの主張立証はなく、(略)地位の昇進に伴う役職手当の増額は、通常は職責の増大によるものであって、昇進によって管理監督者に該当することになるような場合でない限り、時間外勤務に対する割増賃金の趣旨を含むものではないというべきである。仮に、被告としては、右役職手当に時間外勤務手当を含める趣旨であったとしても、そのうち時間外勤務手当相当部分または割増賃金相当部分を区別する基準は何ら明らかにされておらず、そのような割増賃金の支給方法は、法所定の額が支給されているか否かの判定を不能にするものであって許されるものではない。
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