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重要ポイント4 解雇の事由について具体的に定めていますか

ここでクイズです。

Q1.会社が社員を解雇することについての正しい認識は次のうちどれですか。正しいと思うものを選んで下さい。

① 会社はいつでも自由に解雇できる
② 正当な事由があり社会的相当性がある場合にのみ解雇できる
③ 30日前に予告すれば解雇できる


Q2.ラジオのアナウンサーが、2週間に2回、寝過ごしによる放送事故を起こした。2回目の事故は上司に報告しなかった。アナウンサーの起こした放送事故は定時放送を使命とする放送会社の対外的信用を著しく失墜するものであり、寝過ごしという同一理由で2週間内に2度も事故を起こすことは責任感に欠けると考えられる。このような場合、会社はどのように対処すべきですか。正しいと思うものを選んで下さい。

① 普通解雇とするべきである
② 懲戒解雇とするべきである
③ 労働者保護の観点からあらゆる事情を考慮して判断する必要がある


平成16年1月1日より労働基準法が改正され、解雇に関する条文が新設されました。また、就業規則への解雇事由の記載(第89条第3号)、労働契約締結時における解雇事由の明示(第15条)、解雇理由の明示(第22条第2項)も規定されました。

労働基準法 第18条の2(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

これにより、最高裁判決で確立した「解雇権濫用法理」が法律に明記されました。したがいまして、Q1の答えは②となります。

Q2は解雇権濫用法理のリーディングケースのひとつである高知放送事件を題材にしました。

最高裁はこの事件の判決文で、アナウンサーのマイナス要因とプラス要因を挙げ、総合的に事情を勘案したうえで、「当アナウンサーに対し、解雇をもってのぞむことは、いささか苛酷にすぎ、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできないと考えられる余地がある。」と判断しました。解雇権濫用法理とは「労働者保護の観点から、その解雇が苛酷に過ぎないかどうかをあらゆる事情を考慮して判断するという法理」です。したがいまして、答えは③となります。

いかがでしたでしょうか。解雇は30日前に予告すれば良いと思っていらっしゃったとしたら、ここで認識を改めていただければ結構です。解雇は容易ではありません。その点をご認識いただくだけでも解雇のトラブルを未然に防ぐことに繋がるのではないかと思います。ご参考までに高知放送事件の概要を次のとおりです。

高知放送事件 最高裁昭和52年1月31日第二小法廷判決

<事件の概要>

ラジオアナウンサーが、2週間に2回、寝過ごしによる放送事故を起こした。2回目の事故は上司に報告しなかった。(1週間後に上司の指示で報告書を提出)会社はそのアナウンサーを就業規則に基づき普通解雇した。アナウンサーは解雇無効として社員の地位確認を求めて訴えた。

<判旨>
アナウンサーの行為は就業規則所定の普通解雇事由に該当する。しかしながら、普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することが出来ないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になるべきものというべきである。と判断して本件解雇を無効とした。

<アナウンサーのマイナス要因>
・ アナウンサーの起こした放送事故は定時放送を使命とする会社の対外的信用を著しく失墜するものである
・ 寝過ごしという同一態様で2週間内に2度も同様の事故を起こすことはアナウンサーとしての責任感に欠ける
・ 第2事故直後には自己の非を認めていない

<アナウンサーのプラス要因>
・ 寝過ごしは過失であり、悪意ないし故意によるものではない
・ 通常はファックス担当者が先に起きアナウンサーを起こすことになっていたが、2つの事故ともファックス担当者も寝過ごした
・ 第1事故は直ちに謝罪、第2事故も起床後一刻も早くスタジオ入りする努力をした
・ 二つの事故とも放送の空白時間はさほど長くない(10分と5分)
・ 事実と異なる報告書も事実誤認と気後れによるものであること
・ 過去に放送事故歴なく、平素の勤務態度も別段悪くないこと
・ 会社では過去に放送事故で解雇された事例は無いこと
・ 第2事故についても結局は謝罪の意を表していること


<就業規則規定例>
第○条(解雇)

社員が、次の各号の一に該当する場合は解雇とする。
(1)精神または身体の故障もしくは虚弱、傷病等によって、業務に耐えられない、または労務提供が不完全と認めたとき
(2)業務遂行能力を欠き、かつ他の職務に転換することができないとき
(3)勤務成績、勤務態度、業務能率などが不良で業務に適さないと認められるとき
(4)非協力的で協調性がなく、注意・指導しても改善の見込みがないと認められるとき
(5)重大な懲戒事由に該当するとき、または服務規律に違反したとき
(6)事業の縮小その他やむを得ない業務の都合によるとき
(7)天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が困難になったとき
(8)当社の社員としての適格性がないと判断されるとき
(9)その他、前各号に準ずると認められるとき