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社員にやるべきことを伝え、業績向上につなげる評価シートとその使い方

賃金・人事制度を作る究極の目的は会社の業績を向上させることだと、私は思います。賃金・人事制度を通じて、社員が会社の経営目標を達成するために、自分が何をなすべきかを理解し、全社一丸となって社業の発展に取り組む状態に近づけることが、会社業績の向上につながっていくのです。その観点から、いま中小企業に本当に必要な評価の仕方、評価シートとはどういうあるべきかを提案します。

● 会社の旗色を鮮明にする

経営目標を達成するために社員が何をなすべきか、あらゆることが考えられますが、あれもこれもでは社員の力も分散してしまいます。「業績を左右する最も重要な事項」に絞り込む重点主義が大切です。そして、それを社員に公表、周知し、それに基づいて評価するべきです。「後からバッサリ斬る」では「ダメなヤツ」を増やすだけになります。

● 賞与の査定さえしっかりやれば評価制度はうまく行く

大手企業では年4回の査定(賞与査定2回、昇給査定1回、昇格審査1回)を行なうところもあります。中小企業ではこんなに手間はかけられないでしょう。年2回の賞与の査定に的を絞って、効率的に実施しましょう。

「短期間の成果」を評価するのが賞与査定です。これをしっかり行ない、一定期間の賞与査定を参考にすることによって、賃金改定(昇給)や役職への登用などを行うことができます。「短期間の成果」をコンスタントに繰り返すことができるということは「能力」が高いということだからです。

例えば、「彼は、今期、不良率の低減のための改善提案を行い、A製品の歩留を向上させた」これは賞与に反映させます。著しい成果であれば、社長表彰などで金一封を与え名誉を称えるのも良いでしょう。

この成績を繰り返して、「彼は、コンスタントに改善活動を行い、製品歩留の向上させている、今後も出来るだろう」ということになれば、賃金に反映させていきます。あるいは昇格や役職への登用を検討する材料にもするということです。

● 良かった点、悪かった点を伝えて社員を成長させよう

評価結果は伝えるべきです。やるべきことを明確にしても、評価の結果を伝えなければ、人事評価の意味は半減してしまいます。ただし、「君はBだ。もっと頑張ってくれ」と言うだけでは、社員は何をもっと頑張ればよいのかと途方にくれてしまいます。良かった点と悪かった点を分けて伝え、今後どうすればいいかを理解させることが大切です。

● 評価管理シートの使い方

評価管理シートは、次の4つのパートに分かれています。

1. 貢献度評価(賞与査定)欄
2. 賞与算定欄
3. 成果と能力向上に関するコメント欄
4. 総合評価(昇給・昇格査定)欄

記入例を見ながら、以下説明していきましょう。

hyouka.png

評価管理シート(記入例) (PDF file : 14KB)

1.貢献度評価(賞与査定)欄

記入例の会社は製造業です。この会社の一般社員にとって、貢献度項目(業績を左右する重要な項目)は、次の5項目としました。

① 職務遂行能力の向上
② 生産性の向上
③ 不良率低減
④ 5S
⑤ 勤務姿勢

業種によって、会社によって、経営者が大切だと思うことを自由に選定すればよいのです。ただし、あまり数が多いと、社員の取り組みが分散してしまうので、5項目程度に絞り込んだ方が良いと私は思っています。

また、これは階層ごと、職種ごとに設定すべきです。一般社員と管理職では、自分が何をなすべきかが異なるし、職種によっても求められることが異なるからです。

そして、それぞれに評価の視点を掲げています。「職務遂行能力の向上」であれば、「優れた業務知識があるか」、「新しい技術を習得しているか」、「多能工化しているか」、「資格を取ろうとしているか」などです。これらは貢献度項目の内容を例示したものです。評点をつける際には、「職務遂行能力の向上」に関することであれば、この例示以外のことを考慮してもよいでしょう。

評点(評価の段階)は6段階としています。評点の意味は「S=抜群」、「A=優秀」、「B=普通」、「C=ギリギリ」、「D=迷惑」、「E=大迷惑」です。貢献度項目ごとに、評価期間中の社員の成績をつけていくわけです。

評点のつけ方は、評価の視点ごとに点数化して積み上げてはいけません。ざっくりと直感的につけましょう。点数にすれば客観的に見えますが、点数基準の設定などが事実上困難だからです。点数化するよりも、評価会議を開いて、一次評価者である管理職と、社長が徹底的に議論して決めるほうが良いのです。

その議論には、「成果と能力向上に関するコメント欄」がものを言います。感情的になりがちな評価会議ですが、ここに文章を書くことによって、論理的に議論できるからです。

2.賞与算定欄

私は、賞与改革の方法として、賞与を貢献度評価分(分捕り部分)と会社業績分(比例配分)の二つに分けるということを、主張しています。

貢献度部分は年齢や勤続、基本給の額などに関わりなく、貢献度項目の達成度を評価して決定します。そしてこの部分を賞与の総原資から先に確定させるのです。

貢献度項目5項目にそれぞれにS=5万、A=4万、B=3万、C=1万、D=0、(E=賞与なし)というふうに単価をつけます。5項目全てがSならば、貢献度部分25万円が確定ということになります。

(記入例では、S=5万×3項目+A=4万×2項目=23万円が鈴木一郎君の貢献度部分ということです。)

会社業績分は総原資から貢献度部分を先取りした残りを「基本給」や「基本給+役職手当」などの比率に応じて全員に配分します。

(記入例では、「基本給+役職手当」の比率で配分しており、鈴木一郎君の会社業績分は30万円である。)

これを賞与算定欄に記載します。

3.成果と能力向上に関するコメント欄

この欄は、次の3つに区分されています。

① 成果コメント欄・・・評価期間中にどのような成果を出したか具体的に記入します。良かった点と、悪かった点は必ず区別して記入します。

② 能力向上コメント欄・・・評価期間中に成果を繰り返す能力がどのくらい伸びたかを具体的に記入します。

③ 参考資料欄・・・成果または能力向上を裏付ける数値、管理表その他参考となる資料を明記し、添付します。


まず、成果コメント欄と能力向上コメント欄ですが、このコメントは社員に評価を伝えることをイメージして、どこが良くて、どこが悪いか、次に何をなすべきかがわかるように、具体的に書くことがポイントです。単に、良かった、頑張っていたと言う表現では、社員に評価を伝えることは難しいからです。「仕事のうえで自分が何をなすべきか、要求されていること」を明確に具体的に伝えることによって、社員の成長に結びつけることが出来るのではないでしょうか。

この例の鈴木一郎君の場合、次のとおりです。

<成果コメント>
(良かった点)
・不良率低減のための改善提案を行い、A製品の歩留まりを75%から85%へ向上させた。(社長賞受賞)

(悪かった点)
・残業時間が予算を大幅に超過した。(ただし、改善活動のためのやむをえないものであったと考える)

<能力向上コメント>
・改善活動のリーダー役として、ベテラン・若手を引っ張っている。
・オペレーターとして担当するAラインのほか、今期はBラインの操作を安心して任せられるようになった。
・高圧ガス取扱主任者の資格を取得した。

これであれば、鈴木君に対し、「今後も改善活動のリーダーとして、ドンドン頑張ってくれ。」「ただし、残業については、君の健康の問題もあるので、他のメンバーと役割分担を見直すなどして、工夫してみてくれ」、「今期はCラインの操作についても、トライしてみよう 」と言えるのではないでしょうか。

参考資料欄ですが、これを記入し、資料を添付するのは、社員に説明する際に具体的な数値や証拠をそろえて説明した方が、感覚的に言われるよりも、納得が得やすいからです。出来るだけ準備したいものです。

なお、管理職は、成果と参考資料の2区分のみとします。管理職になれば、成果だけを問うということでよいのではないかと、私は思います。

4.総合評価欄

これは社長が最終的に記入します。そして、社員の成果と能力向上を総合的に判断して、昇給と昇格を決定する際に使用します。次のような回数、年数の設定がおすすめです。

○ 昇給は、原則として、年2回の貢献度評価、成果と能力向上に関するコメントを参考にして、社長が決定する。
○ 昇格は、原則として、過去2年の総合評価を参考にして、社長が決定する。